文学
台風をモーツアルトを聴いて待つ 藤木洋良
いわし雲懺悔懺悔でわれ老いる 藤木洋良
赤き実を好むひよの目澄にけり 藤木洋良
人の死は皆美しき草の花 藤木洋良
吹く風に風が微笑む秋の山 藤木洋良
光り飛び風が生まれる花野かな 藤木洋良
名月や兎のついた餅を食ふ 藤木洋良
美しく悲しき色や彼岸花 藤木洋良
秋彼岸生まれては死ぬ光りかな 藤木洋良
喜寿の秋何が目出度いお赤飯 藤木洋良
我を食う人に幸あれ毒茸 藤木洋良
平凡に生きて今日は栗ごはん 藤木洋良
この道はいつか来た道秋の暮 藤木洋良
わが命のらりくらりと秋の風 藤木洋良
背を向けて老いを生きよと秋の雨 藤木洋良
秋の沼波紋広がり黙す風 藤木洋良
来る者は拒まず広き秋の空 藤木洋良
秋の雲遊び心の美しき 藤木洋良
こおろぎやあくびを交わす老夫婦 藤木洋良
天の川ひっそり生きる老夫婦 藤木洋良
貧しきは心なりけり虫時雨 藤木洋良
一匹の秋刀魚を突く老夫婦 藤木洋良
秋の灯や亡き息子宛て手紙書く 藤木洋良
白桃の匂ひ亡き子を呼び覚ます 藤木洋良
秋の夜は酒を飲むから寂しんだ 藤木洋良
命日や闇の底から虫の声 藤木洋良
台風の波に呑まれる日本海 藤木洋良
秋の蝉声透き通り風に死す 藤木洋良
露草や無住の寺の阿弥陀仏 藤木洋良
生きるのがしんどいですよ秋の蝶 藤木洋良